34 震えて甦れ

「震えて甦れ」

ゆるめるモ!の新曲のタイトルである。
これだけで既に、土臭くも生々しく情景が思い浮かぶ。
冷え切った死後硬直に近い心・体に血が通い出し、体中に体温が巡る様が想起される。

2017年2月15日。新宿BLAZEで初披露されたこの新曲はまさにそのイメージに違わず、それでいてこちらの予想に対し阿修羅の手数の如く裏切りの限りを尽くす怪曲となった。

MARQUEEの連載にてDillinger Escape Planのような展開が変わりまくる変態的な楽曲の存在が明かされていたことに加え、作曲者ハシダカズマ曰く「転調バキバキにやっていいと言われた」とのこと。実際、開始1分で既に何が起こったのかわからなくなっていた。「Hamidasumo!」初聴以来の衝撃だ。

こちらが掴みかける前にするりと逃げてゆくリズム、メロディー。轟くノイジーなロックサウンドがベースに展開されているかと思えば、突然ダンスチューンに様変わりする。縦横無尽に飛び回っていた歌声が、突然芯の強いメッセージを真っ直ぐに解き放つ。一時たりとも目が離せない。もちろん耳も。

終盤に進むにつれ、混沌としたリズム・旋律の中に一閃、サビと思しき印象的なメロディーが突き刺すように何度も現れる。
不意に祭囃子のように姿を変えたバッキングはまるで鼓動のようにも思えた。
そのメロディーは姿を見せる度にメンバー各々がステージの中心に陣取り、ソロを取る。いずれも、その表情と歌声には強い意志のようなものが宿っていた。

やがて混迷を極めた音の渦は力強さと共に収束を見せ、地殻を突き破るかのような強靭なグルーヴを生み出す。それは4人になったゆるめるモ!がこれまで暖めてきた底力が大地を突き破って噴出するかのような怒号。

そしてこの激震の果てに彼女らは問いかける。
「どうする?」
「私は行く」
と。

ゆるめるモ!は変わった。
こんなにも強く、逞しい。
誰かに演じさせられているヒーローではなく、自らの力で弱い者のために道を拓いていける戦士となった。
ゆるめるモ!から目が離せないのは、ここからだ。


ゆるめるモ!「孤独と逆襲 EP」
2017.3.15 Release