77 tipToe. 6th ONEMAN「Colorful」ライブレポート&感想

先に書いておくと、あまり伝わらないかもしれないが、今日のtipToe.は過去に観た様々なライブの中で、もしかしたら一番素晴らしい公演を観ることができたのかもしれない。

良いライブの条件として自分が考えているもののひとつに「未来を魅せてくれるかどうか」というものがある。
その点から言えば、今回渋谷クラブクアトロで行われたtipToe. 6th ONEMAN「Colorful」は非の打ち所のないパーフェクトなもので、100点中300点など優に超え、青天井で加算され続ける、そんなライブだった。

 

灯りが落ちる。流れだすピアノの演奏にバンドの音が重なってゆくトラック。照明の移り変わりと共に紗幕に転々と映されるメンバーのシルエット。否応なく高まる期待、興奮。
新曲?いや、時間が進むにつれ徐々にわかる、「The Curtain Rises」だ。
読みという名の期待に応えるように聴き覚えのあるピアノのフレーズとオーケストラル・ヒット。
臙脂色が鮮烈になロングスカートの新衣装を身に纏い登場するメンバー。
「幕開け」を意味するオープニングナンバーが、新たなイントロダクションを伴ってフロアを熱狂の渦に叩き込んだ。

間髪入れずに「ハートビート」、空気を変えてダンサンブルな「ソーダフロート気分」が続くと、スクラッチのサンプリングから「ハッピーフレーバー」「ビギナー」と続け、さらに今度こそ新曲?と思わせる耳馴染みのないトラックに沸き上がるオタクと、それを見てか笑みがこぼれるメンバー。はじまったのは「The Curtain Rises」同様イントロを追加される形となった「ひとりごと」で、既存曲ではあったものの人気曲の思わぬ導入での登場に一際大きな歓声が上がった。

6曲をノンストップで駆け抜けた冒頭ブロックで、既存曲の新しい導入を3パターンも繰り出してくるサプライズ。バンドならよくある''ライブアレンジ''を、オケスタイルでありながら当たり前のように入れてくるのがめちゃくちゃ熱い。「いや、逆になんでどこもこういうことやらないの?」と言わんばかりに、当然のようにこういう演出を入れてくるのがtipToe.だ。繋ぎのライブアレンジは過去にもいくつか登場しているが、今回のライブはこのテの演出がふんだんに盛り込まれている。

新しいインタールードが多数登場したのも印象的だ。中盤ブロックではアルバム「daydream」において回想に位置付けられる「秘密」から夕暮れへ向かい、さらに夜編へと続くtipToe.楽曲の主人公のストーリーを正当になぞったメニューが組まれている。
MC明けに披露されたのは「秘密」「クリームソーダのゆううつ」「茜」の恋愛三部作。「茜」の終盤から夕に鳴く蝉の声が響きだし、「アフターグロウ」へ景色と時間を繋いでゆく。
メンバーがステージから退場すると、この日のライブのために用意されたという球体や棒状のライティングが淡い青色に染まり、夜の訪れを告げる。

ステージに一人現れた三原海に微かな灯りが零れる。かつてソロリーディング演目として披露され、後に伴奏を伴って音源化に至った「はやく夜が明けて、おはよう。が言いたい。」を粛々と演じる。
途中、声が詰まる。後のMCで「感極まって飛ばしてしまった」と明かしており、事実終盤は感極まって嗚咽が漏れていたが、詩のフレーズも相俟ってそれがなおさらこの演目の内省的な独白の世界への没入感を深めており、もはや節を飛ばしてしまったことになど気が付くはずもなく、蒼い闇が染め上げる世界に瞬く間に惹き込まれていった。

心が落ち沈む部屋の夜闇に、月光が差し込むようなピアノのフレーズがやわらかに一音ずつ響き渡る。それはまるで気まぐれな運命が救いの手を差し伸べるかのように。
「blue moon.」はただ1曲でその空間の世界観を支配する力を持った楽曲で、「はやく~」はアルバム「daydream」にてその導入、そして「アフターグロウ」までの物語から繋ぐ役割を担い夜編の冒頭に加えられた演目であると言える。
上述の三原海の情感溢れ零れるパフォーマンスが、「blue moon.」が描き出す宵夢の世界をより深淵に引き立てており、今宵の「夜」はこれまでで最も美しい光景を映し出していた。

「星降る夜、君とダンスを」にサンプリングされている時計の音を用いたインタールードが流れる。眠りに沈む主人公の傍らで淡々と時を刻む針の音が、時間を伴って物語の階段を登ってゆく。
すこし不思議な夜の邂逅を紡ぐ都塚寧々のリーディング演目「砂糖の夜に」、続く「ナイトウォーク」で夜空が眩しく晴れ渡るようなカタルシスは元より胸が空くような気持ちになるのだが、やはりここまでも含めて今宵の夜編は格別と言うほかない。
しかし驚いたのはその次だ。この夜編の終わりに鳴り出したのは、「茜」を思わせる激情を纏ったギターサウンドが疾走感と共にうねり轟く新曲「silent sign」だ。落ちサビをソロで務める椋本真叶が初めて単独で振付を手掛けた楽曲となる。
tipToe.が描き続けてきた物語に、新たなサウンドと共に加えられた次の1ページに、そして恋愛三部作~夜編で積み上げられた感情を巻き上げる嵐のように吹き抜けたこの新曲に、フロアは大いに湧き上がった。

シアトリカルな中核ブロックを終え、終盤戦のゴングを鳴らしたのはワンマン以外ではなかなか披露されない''はじまり''の曲「特別じゃない私の物語」。
ハイハットのカウントを付け加えてバンドライクに「かすみ草の花束を」に繋げる演出は5th ONE MAN
「Pinky Promise」の再現だ。
この流れに更なる新曲「夏祭りの待ち合わせ」が叩き込まれる。被せなしのア・カペラ&コーラスワークからはじまるこの曲はアッパーなザ・アイドルポップで、フロアの全員が初見にも関わらず、最初のイントロから息のあったMIXやコールを叫び倒していた。カラフルに彩られた照明演出もありとても楽しげな曲で、落ちサビはグループ内でも夏祭りの高揚感が似合う……というかそのものである日野あみが歌い上げた。大型アイドルフェスへの出演を控えたこの時期に、アイドルオタクならどこの現場の人でも簡単にビートの文脈を拾ってコールを入れられるこの楽曲の登場は、近い未来の素敵な光景を想って胸が高鳴った。
ライブはさらに続き、昨年渋谷WWWで行われた「Our blue moment.」で披露された「Cider Aquarium」~「僕たちは息をする」のメドレーver.が登場。「Cider Aquarium」の初披露時の演出で、以降もたびたび使われる定番の演出で、先の「特別じゃない私の物語」~「かすみ草の花束を」と共に通っているファンにも嬉しいリバイバルだ。
しかし今回はそれだけでは終わらない。「僕たちは息をする」のアウトロからノンストップで鳴り響いたトラックは「星降る夜、君とダンスを」の新しいイントロ。カラフルなペンライトと共にオーディエンスは跳ね回り、フロアの熱は最高潮に到達した。

ファンがサプライズで用意したサイリウムや、グッズとして新登場したオリジナルペンライトが揺らめく光の海に、アンコールを求める声が感情のままに響く。
呼び込まれたメンバーが登場すると、眼前に広がる光景に驚きつつ、ファンに向けて一人一人感謝の言葉を語った。

最後に披露されたのは、締めの定番「夢日和」。熱量と多幸感に満たされたフロアとメンバーはこの楽曲で大団円を迎え、およそ2時間に渡るステージに幕を下ろした。
持ち曲のすべてに新曲2曲を加えた全22曲を披露。サウンド面の新たな演出が多数盛り込まれ、曲数も過去最多となり、新鮮な驚きとエモーショナルが常に注がれ続ける刺激的で幸福なライブだった。それでも体感は実際より短く感じられ、どれほど充実した時間を過ごしていたのか実感する。


今回特筆すべき点は、多数の新演出が施された曲の導入部、そして''現体制以降''を担う2人が主役と言わんばかりの2曲の新曲だろう。

大々的にイントロが追加されていた3極は下記セットリストに「''Colorful'' ver.」と仮に記した。今回のワンマンのために製作されたトラックだと思われるが、「ソーダフロート気分」~「ハッピーフレーバー」のような繋ぎも含め、今後のライブでも演出のバリエーションとしての登場が期待できるだろう。新規インタールードトラックの多数起用もあり、従来の演出に加え今回の演出の再提示、そしてまた新たな演出で過去の曲たちも生まれ変わり続けることを示唆しているようで、これからのtipToe.に対する期待感を両手でも余るほど大きく膨らませてくれるものだった。
同時にバンドがライブ用にアレンジする時のような導入追加が多々見られ、オケライブ(身も蓋もない言い方をすれば''カラオケ'')が主流のライブアイドル全般に対する挑戦とアンチテーゼのようにも感じられる。あるいはバンドというスタイルの活動に対しても。

そして新曲だ。主役は''ピノムック''コンビで知られる2人である。
2人は先日、グループ加入2周年を記念し、「ピノムック」名義でセルフプロデュース・ワンマンライブを行った。
その際に披露されたtipToe.楽曲でも感じられたことだが、''現体制以降''グループを引っ張る2人が主役を張る新曲たちでもまた、ピノムックワンマン同様頼もしい未来を堂々と魅せつけてくれた。
初期メンに推しがいる自分としては寂しい気持ちも否定はできないのだが、同時にこの2人の頼もしさには新たなワクワクを感じているし、グループが新たなフェーズに突入したことを確信し、現体制の残り5ヶ月の活動もますます楽しみになった。


この夏はTIF、@JAMと大型フェスへの出演も決まっており、ほどなくして訪れる10月には今回の渋谷クラブクアトロをも超える過去最大キャパシティでのワンマンライブ(会場は新オープンのVeats Shibuya)が開催される。
もはや明かりのない未来を振り払うようなステージにはいない。眩い灯りに照らされた未来への道を全速力で駆け抜けてゆく姿しか見えてこない。ただそれに、愚直に、ピュアに、ついていこうと思う。


これほどまでに良いライブを、音楽を、心ゆくまで堪能できる時間なんて、人生でどれくらいあるだろうか?そう思わずにはいられなかった。
「いや…わりとあるよ笑」なんて言う人もいるかもしれない。ていうかいる。そんな反論、億も承知の上で言っているのだ。
最高最高と誰もが折に触れ感じ口にする中で、その中でも最上の「最高中の最高、極み」を「EPIC」という単語に意味付けたシンガーがいる。
tipToe.の今回のワンマンライブは、まさに「EPIC」と、そう表現するほかない極上のステージだった。
……でもまだまだこれよりもっとすごいものが観られるって確信しちゃったから、それもどうなのかな。また新しい言葉を探せばいいか。


最後に、ライブ終了後、素直に零れた感想を書いて記事を終える。

正直な話、こんなにカッコいいライブをするグループを応援している自分が誇らしくなりました。
胸を張って「tipToe.のファンです!」と言える。好きなものがいくつあったって、当たり前のことじゃないんですこれは。
そんな幸せを噛み締めつつ、今日は眠りに就こうと思います。

 

 

 

◆セットリスト◆

 

1.The Curtain Rises(''Colorful'' ver.)
2.ハートビート
3.ソーダフロート気分 
4.ハッピーフレーバー
5.ビギナー
6.ひとりごと(''Colorful'' ver.)
MC
7.秘密
8.クリームソーダのゆううつ
Interlude I
9.茜
10.アフターグロウ
Interlude II
11.はやく夜が明けて、おはよう。が言いたい。
12.blue moon.
Interlude III
13.砂糖の夜に
14.ナイトウォーク
15.silent sign
MC
16.特別じゃない私の物語
17.かすみ草の花束を
18.夏祭りの待ち合わせ
19.Cider Aquarium
20.僕たちは息をする
21.星降る夜、君とダンスを(''Colorful'' ver.)

En.夢日和

 

※バージョン違いやInterludeの表記は筆者独自のものです。公式表記ではありませんのでご注意ください。