83 tipToe. LIVE TOUR ''SCHOOL TRIP 2019'' at 札幌cube garden クイックレポート

11月23日、tipToe.現体制最後となる全国ツアーの札幌公演が行われた。

ツアーも折り返しとなり、暦も間もなく最後の月に差し掛かろうとしている。

昨日までの首都圏の寒さとは打って変わって、北海道とはいえ寒いなりにも過ごしやすい気候となった本日、札幌の街の一角を熱くしたエモーショナルなライブの一部始終を書き留めた。

 

客電が落ちると、しっとりと響いてきたのはピアノの音色。「僕たちは息をする」のAメロのピアノフレーズのみが静かに繰り返され、徐々にバンドサウンドが加わり、さながら「Before The Curtain Rises」の「僕たちは息をする」バージョンのオープニングSEでメンバーが登場。
最北の地で1曲目から惜しみない熱量をぶつけると、2曲目には初期の隠れた人気曲「ビギナー」が続く。
後にして思えば「僕たちは息をする」はオープニング&メインテーマ、「ビギナー」はシーン1だろう。今回のセットリストは昼から夕、夜に向かっていくtipToe.王道ストーリー系セトリの新作だ。

曲終わりのフォーメーションを崩さないままに入った成瀬ゆゆかによるカウントに歓声が上がり、一転可愛さが染み渡る「ないしょとーく」へ。さらに「秘密」のメロディーラインをなぞるインタールードのピアノソロを添えてビッグバンド風の「秘密」を披露。序盤からフロアを大いに沸き立たせた。

 

この日最初のMCでは自己紹介に続き、普段MCをすることが少ない成瀬・三原・都塚の3人が「なんか喋ってて!」と他メンバーの水分補給のためにトークをすることに。
三原海は序盤の曲で靴が片方脱げてしまい、ステップが肝心な「秘密」のためにもう片方も脱いでパフォーマンスしていたことを告白。とっさの判断で窮地を乗り切ったことを明かした。

 

おもむろに舞台袖から白or黒の円筒形の椅子を持ち出すメンバーたち。
一同椅子に腰かけて落ち着いた雰囲気ではじまったのは、エクストラシングルとしてリリースされた「slow'n'Drip」収録バージョンの「クリームソーダのゆううつ」「かすみ草の花束」の2曲だ。
いずれもアンプラグド・バンドアレンジで、歌割りも普段とは異なる。特別な機会にしか披露されることのない2曲に心地好く聴き入った。

 

続く「アフターグロウ」の冒頭では、歌い出しから感極まってしまった日野あみが声を詰まらせてしまう場面も。そこをシームレスに歌い繋いだのは他でもない椋本真叶で、ピノムックコンビとして親しまれる二人の絆を強く感じさせる。最後のパートでも花咲なつみが日野にいつも以上に寄り添い、楽曲の世界観と相俟って今のtipToe.がこの6人であることの尊さに胸が熱くなった。

 

アフターグロウ」とは逆順で披露されることが多い名曲「茜」の切なさ溢れる情感で夕方の世界が締め括られると、渋谷クアトロワンマンでも使用された秒針の音が印象的なSEが流れる。都塚寧々によるリーディング楽曲「砂糖の夜に」は「ナイトウォーク」へと続き、優しい夜の世界にフロアが包まれた。


「信号が青に変わるよ」と暖かな闇が訪れたフロアは、うねり狂うようなオリエンタルなピアノリフが印象的な次曲「僕らの青」によって一変。サビでは三原海のパワフルなハイトーンが曲をリードし、楽曲に渦巻く激情が洪水のように叩きつけられた。tipToe.のセンチメンタルサイドの極北とも言える衝撃的な楽曲で、1曲で瞬く間に空間を支配した。

アフターグロウ」に続く「茜」、「ナイトウォーク」に続く「僕らの青」など、決して綺麗には終わってくれないストーリーの展開は、さながら青春の過渡期に滲むブルースを生々しく描き出しているかのようだ。

 

夕暮れから陽が沈み、夜の世界を巡ったところでこの日2度目のMCが入る。

メンバーはライブ前に到着したばかりで、まだ観光ができていないそう。そんな中でも既に日野あみは近場で味噌ラーメンを食べたといい、聖地巡礼をファンに勧めた。
観光は明日の楽しみにしているそうで、日野・三原は朝からご当地のラーメンを食べに行く予定とのこと。Twitterでのお土産話にも期待できそうだ。

 

1st full album「magic hour」において、ロック&センチメンタルの二大巨頭を「僕たちは息をする」と共に担う人気曲「ハートビート」から終盤戦がスタート。これまでの夜に至る物語を背負って力強いパフォーマンスが繰り広げられた。
畳み掛ける「Cider Aquarium」で踊らせると、インタールードなしでノンストップで続く「星降る夜、君とダンスを」でオーディエンスの熱量をピークに導く。最後まで間髪入れずに音を鳴らし続けた「特別じゃない私たちの物語」で有終の美を飾った。

 

専用の特別なSEと共にオープニングに選曲された「僕たちは息をする」は、時間を示すフレーズが繰り返し登場する楽曲だ。
「手元の明かりと午前3時」という歌い出し、物語は深夜とも明け方ともつかない時間から描かれる。
夕闇が近づいても変わらず惰性が続く時間、日々。
「時間だけ進んでく いつか追いつければいいのにな」と唄う主人公に不意に起こった物語が、次曲以降のすべてなのではないだろうか。

綺麗な涙を零す心の呼吸と、美談になどしたくもない憂鬱を繰り返し辿り着いた結末は、惰性の回旋に連なる深夜でもましてや明け方でもない、言うなれば新しい夜明けの鮮烈な決意の言葉だった。

 

「踏み出そう 新しい世界」

 

tipToe. LIVE TOUR
''SCHOOL TRIP 2019''
2019.11.23 at 札幌cube garden

SET LIST

1.SE(僕たちは息をする)
2.僕たちは息をする
3.ビギナー
4.ないしょとーく
5.Interlude(秘密)
6.秘密
7.クリームソーダのゆううつ -unplugged-
8.かすみ草の花束を -unplugged-
9.アフターグロウ
10.茜
11.Interlude(砂糖の夜に)
12.砂糖の夜に
13.ナイトウォーク
14.僕らの青
15.ハートビート
16.Cider Aquarium
17.星降る夜、君とダンスを
18.特別じゃない私たちの物語

En.夢日和