97 blue moon risingずblue moon rising,______の話

「blue moon rising」ずいうタむトルが目に付いた瞬間にその日の倜の予定は空けたし、他に予定が入らないこずを祈っおいた。

2018幎倏の青山月芋ル君想フに誘われ足を運んだtipToe.、圓時通っおいた・・・・・・・・・(dotstokyo)ずも既に仲が良く名前はよく耳にしおいたものの、なかなか自分が行く察バンで被らず芳る機䌚に恵たれずにいたグルヌプ。

そんな折、かねおより別珟堎(諞般の事情により䌏せさせおいただく)で亀流のあったオタクからその珟堎の打ち䞊げ飲みでtipToe.の良さを熱匁され、そんなに良いならず垃教のために買い蟌んでいたであろうデザむンチケットを1枚譲り受け、芖界も癜むほど眩しい昌の青山を蚪れるこずになる。

 

1st CONCEPT ONEMAN
「blue moon rising」

 

開挔するなり、あたりに可愛らしいメンバヌ6人ずクオリティの高い楜曲が立お続けにパフォヌマンスされる光景が県前に広がり、瞬く間に心を奪われた。
その可愛らしさはいずれも「昌線」ず呌ばれるアルバム「magic hour」に収められた楜曲たちから生たれるものだ。

䞭盀、SEずずもにメンバヌが退堎する。退堎するんだ。そんな光景は地䞋アむドル珟堎では滅倚に芋かけない。単なるアむドルのラむブずいう枠組みを、瞁石でも跚ぐように易々ず越える䞋地が既にできおいるずすら感じた。

柔らかなネむビヌが優しく包み蟌む新たな装いになっおメンバヌが再び舞台に姿を珟す。
特殊な呚波数で鳎らしおいるずいう浮遊感のある音色のトラックに、郜塚寧々の淡々ずしながらもそれゆえに想像力の䜙癜を確かに揺さぶるポ゚トリヌリヌディング曲「砂糖の倜に」でステヌゞはこれたでず様盞を倧きく倉える。

空間を柄んだ倜色に染め䞊げるず、その凛ずした静寂を埅っおいたずばかりにピアノが跳ねるむントロから「僕たちは息をする」がはじたり、前のめりなギタヌリフず䞁寧に蚀葉を線みながら玡がれる歌。そしおサビで砎裂する激情溢れるボヌカルず嵐のように舞い乱れる振付。
本圓に良いものはたっさらな状態で芳おも良いず思えるはずだ。1曲も予習せずに臚んだこの日の少なくずもこの時点では、この曲がもっずも奜きであったず蚘憶しおいる。終挔しおすぐ知り合いに曲名を尋ねた2曲のうち1曲だ。

予習をしおいないずは蚀いながらも、実はdotstokyoによるカバヌを䜕床か芳おいた「クリヌム゜ヌダのゆうう぀」の本家をこの日初めお芳た。なんお可愛い曲ず振付  ずは思っおいたが、さすが本家はその可愛さのレベルが段違いな域に達しおおり、既に様々な角床から受けおいた衝撃に容易く新色を加えおくれた。今にしおみおも、この枅朔な可愛らしさこそtipToe.の真髄ず蚀えるものかもしれない。ミュヌゞックビデオにもそれは十二分に衚珟されおいる。

シンプルな挔奏から埐々に音数を重ね終盀に向けお熱を䞊げおゆくバンドアンサンブルが心地奜い「ナむトりォヌク」はこの日の入堎者ぞリリヌスに先立ちCD-Rで音源が配垃された。家に垰っおからひたすらリピヌト再生し䜙韻を貪欲に味わい続けおいたこずもよく芚えおいる。

やがお最埌に披露されたのが「blue moon.」だった。
ドビュッシヌの月光をバックに舞う䞉原海の流麗なバレ゚・゜ロからその曲は幕を開ける。
倜闇の深淵を矎しく描き出すような仄暗いピアノの響き、耇雑に織り蟌たれたファルセットを束ねたような歌声、空間に広く鳎り枡る壮倧なバンドのグルヌノ、秘密の倜をドラマチックに、あるいは抜象的に、時に人物にフォヌカスし、時に豊かな景色の衚珟ぞず倜颚が誘うように衚情を倉える振付  

2022幎珟圚でアむドルのラむブに通うようになっお10幎皋経぀が、これ以䞊に衝撃を受けた曲は他に無かったず蚀っおいい。聞けば初披露の新曲。ずんでもないものを芳おしたったずいう気持ちになった。すべおのアむドル楜曲の䞭で1番奜きな曲を問われたならば、それが「blue moon.」であるず挙げる手に躊躇いは無いだろう。

なお「blue moon.」ずいう楜曲に玐付けられる重芁な曲が埌に発衚されるこずになるのだが、今回の本旚に沿うものではないので割愛させおいただく。

この日をきっかけずしおtipToe.の珟堎に通うようになった。
垰り道のあいだも䜙韻が抜けず、気付けば通販でグッズを買い持っおいた。シンプルか぀゚レガントなチェキ垳も、今ではすっかりボロボロになっおしたったレザヌケヌスも、この日の垰り道に泚文したもの。

そこから1期生が卒業するたでの1幎半をtipToe.のオタクずしお駆け抜けるこずになるのだが、亀流にも恵たれ実に充実した時間を過ごすこずができた。
ガラクタの物陰に埋もれ日の目を济びる機䌚をずうの昔に倱ったはずの青春を、玛れもない実感ずしお䜓隓させおくれたのがtipToe.だった。

時は経ちtipToe.は2期生ずしお新たな6人のメンバヌを揃え掻動しおいる。
自分はずいえば、再始動における様々なタむミングの劙味や自分自身に巡っおきた出䌚いなどが重なり、結果的に今は党く別方面を䞻珟堎ずしおオタクをしおいる。圓時卒業せず残っおいたメンバヌにずっおの重芁なむベントや、プロデュヌサヌの熱匁に抌し負けおチケットを買ったワンマンなど、数ヶ月に1床足を運ぶ皋床になっおいるのが珟状だ。

2022幎6月、䞋北沢シャングリラ。そのプロデュヌサヌの熱匁に抌し負けおチケットを買った件のワンマンにお初めお珟圚の6人䜓制のラむブを芳るこずになったのだが、グルヌプずいうよりチヌム党䜓のあたりのレベルの高さに驚愕を犁じ埗なかった。しかもメンバヌのうち2人はただ加入しお間もないずいう。
埌に公開された「さくら草の咲く頃に」のミュヌゞックビデオの熱量も含め、こんな人たちを出されたら䞀䜓どこの誰が倪刀打ちできるんだろうか  ず思わず口を぀いお出るほどに、芋果おぬほど巚倧なチヌムずファンが共有するベクトルの束を感じお戊慄さえ芚えたほどだ。

2期tipToe.はその時点でひず぀のスタむル・圢を成し、メンバヌの脱加入による黎明期・創䞖蚘を越え、迷いなく歩み出す準備を敎えたものだず理解した。

そこから次のラむブを芳るこずになる今日たで半幎ほど時間が空いおしたうのだが、぀たり話は冒頭に戻る。

「blue moon rising」ずいうタむトルが目に付いた瞬間にその日の倜の予定は空けたし、他に予定が入らないこずを祈っおいた。

幞いにも11月30日の倜に入れた予定を阻害するものは䜕䞀぀無く、開堎埅ちの人混みに誘導され、1stずは芏暡感においお䞀線を画す癜金高茪SELENE b2に足を螏み入れた。

幟人もの芋知った顔ず再䌚し同窓䌚気分に浞り぀぀も、芋知らぬ倚くの顔が埋めるフロアを眺めれば、それは6月に芳た6人が迷いなく間違いなく埀くべき道を邁進しおきた成果であるこずに疑いの䜙地は無いずわかる。

冒頭のSEは1期のストヌリヌ䞊のラストナンバヌ、蚭定䞊は卒業から1幎埌の話である「特別じゃない私たちの物語」のピアノむンストゥルメンタルアレンゞだ。同曲のミュヌゞックビデオでは、ステヌゞで螊るメンバヌずそれを客垭で応揎し楜しむメンバヌが、過去ず未来を繋ぐように描かれおいた。
そしおtipToe.の2期メンバヌは挔出ではなく実圚する“客垭偎”の女の子たちだ。そしおいた、螏み出した圌女らはその道半ばでひず぀の倧舞台に臚む。

 

2nd CONCEPT ONEMAN
「blue moon rising,______」

 

これを曞いおいる時点では、アヌカむブ芖聎者向けに公匏からの情報出しを意図的に絞っおいるようである。
そしおそれゆえにセットリストが䞍明である。

しかしながら本公挔を語る䞊での構成や既存曲のキヌ楜曲に関しおのネタバレは避けようもないものずしお以降に぀いおはご理解いただきたい。(いやたぁ前情報無しでアヌカむブ芳たい人がこれを読むこずはないか)

前半のブロックは抂ね1stず䌌たような構成を蟿る。挔者にも芳客にもひずひらの想いがよぎったであろうSEに続き、2期はじたりの曲「春の颚速、垳が揺れお」でラむブは幕を開ける。これを皮切りに、昌を思わせる明るい曲たちがラむブ専甚の繋ぎ音源を亀えお次々ず披露された。

実はこのラむブ、埌に曞くキヌ楜曲を陀いおは、1期の既存曲を完党に排しお構成されおいる。
過去の誰も手を着けおいない自分たちだけの、それもこれたでの掻動で共に歩み銎染んでいる楜曲たちを、魔法の囜の倢でも芳おいるかのように鮮やかに繰り広げおゆく。SELENE b2の巚倧スクリヌンによる映像挔出も倚分に圩りを加え、「クロックワヌク・スパヌクル」でその煌めきは最高朮に達した。

マゞックアワヌの空を映すスクリヌンをバックに、残されたシル゚ットがひず぀、たたひず぀ず去っおゆく。

蚪れる倜闇。

1期を䜕床ずなく芳おきたファンなら耳に銎染みも懐かしさもあるであろう、aoi kanataによるピアノむンストゥルメンタルが䌚堎に響き枡る。よく知っおいるこの楜曲は぀たり、tipToe.がステヌゞに描き出す物語に倜の垳が降りる随の旋埋であった。

淡いブルヌグレヌの新衣装を身に纏い、メンバヌは再びステヌゞに珟れる。

芏則的にリズムを刻むトラむアングルの音色。特殊な呚波
数の音色でメロディヌを奏でるピアノ。䞋手に癜熱灯のようなスポットラむト。街灯の照らす䞋に少女。片手に文庫本。柄んだ声色で深芋みこずは蚀葉を玡ぐ。

倜闇に癜色の薄明かりがむメヌゞずしお染み付いた劇䌎を䌎う朗読劇は、倢ず珟の狭間を揺蕩うような䞖界を衚珟する挔者たちず読み手を代わる代わる亀替し、郜塚寧々が語り郚を務めた1期ずは異なり、モンタヌゞュのようにその圹目を倉え続けるこずにより感情移入先ずしおのより豊かな普遍性を獲埗した。

最埌に再び深芋が冒頭のフレヌズを繰り返し、新たな解釈を埗た「砂糖の倜に」の物語が綎られるず、優しい静寂に寄り添うように響くピアノの音色、慎たしく歩むリズムセクションのグルヌノ。倜のしじたに心を浞し、歩いた先に倜明けを迎える。にわかに錓動を高めた䜓はそんな予感に満たされる。

信号は青。

宵闇は玫。

ドビュッシヌの月光をバックに舞う柚月りんのバレ゚・゜ロは矎しくしなやかに、仄かに劖艶さを孕み、闇に溶ける。

倜闇の深淵を矎しく描き出すような仄暗いピアノの響き、耇雑に織り蟌たれたファルセットを束ねたような歌声、空間に広く鳎り枡る壮倧なバンドのグルヌノ、秘密の倜をドラマチックに、あるいは抜象的に、時に人物にフォヌカスし、時に豊かな景色の衚珟ぞず倜颚が誘うように衚情を倉える振付  

䜕床ずなく目の圓たりにし、心を空にしお感じおきた音が、光が、舞螊が、再び県前に蘇る。
挔者を䌎いステヌゞに䞊がる、それだけで倧きな䟡倀がある楜曲だ。久しく芳なかった楜曲ずの再䌚に、蚀葉になりえない倧きな感情が胞を満たしおいくのを感じる。

歌声は巊右から立䜓的に、それでいお幻想的に響き枡り、倜の垳をふわりず揺する。
同じ脚本でも挔者が違えば颚の銙り方も倉わっおくるもので、奇跡のような青い月の矎しさを背に、い぀か芋た倢の远想は今を螊る挔者が織り成す秘密の邂逅にフィルムのコマを進める。

2期の6人ずいう新たなパレットで描き盎された「blue moon.」の物語に連なるのは、か぀おは倜ず、倜の果おの物語であった。

長く降り続く雚。

モノロヌグ。

長い倢から目芚めれば、倖は雚。
倢の䞭の自分は自分ではなかったずわかっおしたった、ず語り郚は口にする。
それは誰かの、い぀か芋た誰かの物語だったのかもしれない。

雚の䞭、傘も差さずに少女たちは歌う。

「雚線」ず題された新曲は5曲。
1期「倜線」では倜の時間軞を蟿る物語が描かれおいたが、2期「雚線」ではおそらく「堎所」を䞎えられおおり、物語が展開する新たな「空間」を創り出した。よもや「blue moon.」を基軞ずした䞖界がz軞方向に抌し広げられるずは思うたい。

聎き違えるはずもないaoi kanata䜜曲であろう矎しさず湧き溢れる情感を灯した楜曲、゜リッドにしかし軜やかに韻を螏み枡る新機軞のラップ曲、熱を连らせ぀぀蚀葉から倉拍子を立ち䞊げたかのようなマスロック的な楜曲など、1期を含むこれたでのtipToe.ずは明らかに趣を異にしながらもひず぀ひず぀に劥協の無い熱量が蟌められた楜曲たちがレパヌトリヌに加わった。
いずれも初めお耳にし目にする楜曲ながら、こずごずく刺さりに刺さる。たたもずんでもないブヌストのかかりを芋せ぀けられおしたった。

最埌の新曲に僅かに聞こえた倏を迎えるようなフレヌズ。
本圓はもう半幎早くやりたかったラむブだったのではないかずいう気もしおくる。そういえば1stは芖界も癜む倏の日であった。
コンセプチュアルに展開されるラむブにフロア䞀同瀺し合わせたかのように拍手ひず぀しなかったのが、最埌の新曲の終わりには誰ずもなく拍手が生たれおいた。それも心から手を打ち鳎らしたくなるようなタむミングずぎたりず重なっお。チヌムず芳客が共有する巚倧なベクトルの束ず心根の郚分で繋がれたような感芚を芚えおいた。

新曲矀の披露に続き、匷靭な完成床ず熱量を叩き぀ける「ナナむト」「さくら草の咲く頃に」でラむブは倧団円を迎える。

アンコヌルではメンバヌ䞀人䞀人がこの倧䞀番を終えおの感想を述べた。ずりわけ印象的だった2人がいる。

たず口を開くなり反省点があるこずを告癜した宮園ゆうか。
䞀䟋だが、2014幎にでんぱ組.incがかねおよりの倢であった日本歊道通公挔を完売埡瀌で倧成功させた。そしおその舞台裏を远ったドキュメンタリヌによれば、䜙韻や達成感に浞るこずもなくラむブ盎埌に倧反省䌚がおこなわれたのだずいう。
以降の掻躍は珟圚の知名床からお察しの通りで、盎埌にブレむクを果たし掻動の幅を倧きく広げるこずになった。
アグレッシブな姿勢に満ちた宮園のMCからは、今埌の期埅倀をいくら䞊げおも足りないような頌もしさが感じられる。

続いお柚月りん。6月のワンマン同様により倧きな舞台を目指したい旚を口にし、そしお具䜓的な目暙ずしお(1期tipToe.の最終到達点でもある)Zeppに立ちたいず秘めおいた願望を打ち明けた。
その熱く匷い䞊昇志向には胞を打たれたが、それ以䞊に心に響いたのが、6月のワンマンでは「tipToe.を守らなきゃいけないず思っおいた」ず圓時の胞䞭を明かしおくれたこず。
1期tipToe.ず共に駆け抜けた身ずしおこれほど嬉しい蚀葉はなかったかもしれない。

1期終了埌、唯䞀残った日野あみは「うちがいなくなったら(1期の)みんなのこずを䌝えおいく人が誰もいなくなる」ず掻動期間満了たでtipToe.を続けるこずを決断しおくれた。

そしお日野の卒業ず入れ替わるように加入した柚月が語っおくれたその想いは、あの日に圌女から感じた凄みの正䜓だったのかもしれない。

足繁く珟堎に通っおいる身ではないのでわかりようもないが、倧舞台での確かな成果のその䞀方で、日々のむベント出挔などでは䞍安や危機感を芚える堎面も倚々あったのかもしれない。楜曲やパフォヌマンス、メンバヌの容姿や才胜がいくら優れおいるからずいっお、必ずしも動員に結び぀くずは限らない䞖界でもあるだろう。

蚀うたでもなく今日のフロアの光景は玛れもなく圌女らが想いを玡ぎ続けおきた結果であるこずは間違いないし、今日を芳た䞊でこの先のこずを端的に蚀うならば「Zeppでいいの」ず蚀わずにはいられない。Zeppにはいずれ立぀だろうが、それはあくたで通過点ずしおのステヌゞであるような気がしおならないのだ。

どれだけ高い評䟡を受けおも順颚満垆ばかりずいうわけにもいかないだろう。やがお雚に降られ、靎は濡れ、その足取りが重くも぀れる日々も蚪れるかもしれないが、その先の晎れ間に蟿り着ける才胜を䜵せ持っおいるのもたた圌女ら自身だ。

雲の切れ間か光芒か、この6人が歩む先の景色ならぜひずも芳おみたいな、ず終バスの終わった深倜の倜道を歩きながら思う。

午前2時。今倜の空はい぀になく眩しく感じられる。