36 ゆるめるモ!の統合と炸裂 - バトルニューニュー仙台公演「恐るべき子供たちが帰ってきた」

懐かしの旧「ゆるトロ(slo-モ!)」で登場したメンバーが両手を掲げると即座に歓声が上がる。オープニングナンバー「べぜ~る」からスタートしたライブは、やる気なさげなゆるすぎる煽りなどパフォーマンスも当時を踏襲したもので、続くグループの始まりの曲「ゆるめるモん」を経て行われたMCもゆるみを極めていた。

今回のライブはゆるめるモ!がデビュー当初から行っているツーマン企画「バトルニューニュー」で、通常は異なるジャンルのバンドなどをゲストに迎えて開催されるのだが、仙台公演では現在ゆるめるモ!VS過去ゆるめるモ!という異色の対バンが組まれた。

トップバッターの過去ゆるめるモ!は、当時リリースされたDVDのタイトルにちなみ恐るべき子供たちと称し2014年から招聘された。
この恐るべき子供たちはライブだけでなく、なにも話すことを決めずラフに行っていたMCや「普段は8人で活動してるんだけど今日は4人お休みでね」とメンバーの休みが多かった状況をうまく再現。衣装もアルバム「Unforgettable Final Odyssey」リリース当時の、DEVOを意識したものだ。

とりあえずようなぴがMCの進行をするものの、今では考えられないすさまじくgdgdなMCに笑いが起こる。突拍子もなく「さっき鼻血出た」とか言い出すしふぉん何も喋らないあの、「わー」「すごーい」とまったりしたけものフレンズみたいなけちょんなどが脱力の限りを尽くす。とりあえず2017年のようなぴが召喚され今回の「バトルニューニュー」の趣旨説明が行われた。

カウベル持ってる人ー!」とこれまた懐かい呼びかけから「あさだ」へ。2015年に再録されているが、今回は「Electric Sukiyaki Girls」収録の原曲、かつイントロのドラムがカットされたバージョンで、ローファイなベースラインがカウベルと共にフロアに響く。さらに1stフルアルバム「Unforgettable Final Odyssey」にも収録された初期の雰囲気を象徴する「ぺけぺけ」を続けて披露した。

雰囲気はゆるいながらも、ライブが熱いことは当時から変わらない。「ゆるめるモ!の歌詞を書いてくれてる小林愛さんのバンドの曲です!」と続けて歌われたのは当初からのレパートリーである「白玉ディスコ」。サークルモッシュが発生し、さらに代表曲「逃げろ!!」でフロアの熱量は増していった。

「2017年のゆるめるモ!さんがんばってるね~」とものすごく他人事のようなMCが繰り広げられ、あのは勝手にどこかに行くという相変わらずの当時ぶりを炸裂させる。曰く「そのへんの山に行ってた」。
がんばっている未来のゆるめるモ!に宛てて「生きろ!!」を披露すると、当時の定番曲「manual of 東京 girl 現代史」と続け、最後は「なつ おん ぶるー」で再びサークルモッシュが起こり、フロアがぐちゃぐちゃになったまま過去ゆるめるモ!のライブは幕を閉じた。



懐かしい曲で固めた2014年のゆるめるモ!によるライブの熱も冷めやらぬ中、ガラリと雰囲気を変えたロックサウンドのSEと共に今度は最新の衣装をまとった現在のゆるめるモ!が登場。

こちらは最新曲「震えて甦れ」でライブをスタート。力強いメッセージと共にフロアを踊らせると、続けてミニマルディスコチューン「スキヤキ」を披露。「スキヤキ」は2014年リリースの楽曲でライブでも定番のナンバーだが、2017年に入ってからは「Only You」「id アイドル」といった重要曲と共に頻繁に披露されている楽曲だ。

過去ゆるめるモ!とは打って変わってMCの進行にも締まりがあり煽りにも熱が入る現在ゆるめるモ!

一旦MCを挟むと、この日のハイライトは思いがけず訪れた。
その楽曲が、2ndフルアルバム「YOU ARE THE WORLD」のオープニングナンバーとなった「モモモモモモ!世世世世世世!」。披露されたのはかなり久しぶりなのだが、実は現在のゆるめるモ!のスタンスと非常に合致している楽曲なのだ。

メンバーは近頃のライブで「逃げてばかりだった自分たちがようやく『逃げていいんだよ』と言えるようになってきた」とよく語っている。
「地獄みたい きっと明日はもっと 両手振って走り出せない」
「だから眠る 今日は逃げる 仕方ないでしょ」

と、逃げる側として歌っている「逃げろ!!」に対し、
「モモモモモモ!世世世世世世!」は
「ギリギリできりきり舞いな時は当然いつでも呼んでほしい」
「ただただ観てるだけじゃいけないなと思った」
「任せてほしい この場のことは」
「もう何も出来ないと思ってる君に何度も会いに行く ゆるめるモ!
と、頼もしい言葉達が並ぶ。「いざゆかん」と。

この楽曲が発表された当時、窮屈な社会をゆるめることを標榜してきた彼女らが、この曲をもってついにヒーローになったのだ!と胸が震えたのを覚えている。哀愁漂うシリアスなサビメロは、悲しみも苦しみも背負いそれでもなお闘わんとする特撮ヒーローの終盤のストーリーのような雰囲気を感じさせた。

「逃げていいんだよと言える側になった」今のゆるめるモ!にこそ歌ってほしいとずっと願っていた1曲だった。
直前の過去ゆるめるモ!による当時を再現したライブがあり、そして時系列的には中期にあたるこの楽曲が歌われたことで、過去と現在が一本の大きな柱で貫かれた感覚を覚えた。
メンバーが度々口にする「今も昔もゆるめるモ!である」ということを、言葉ではわかっていても真に理解することは難しい。今のゆるめるモ!は大きく成長を遂げ、「ゆるかわいい」から「カッコいい」グループになった。思い出は微かな記憶として残り、今だから味わえる旨味を見つけるよりも過去のそれを求めてしまう人もいるだろう。あるいは、現在しか知らない人は辿ってきた道程にあった姿を体感として知ることはできない。

この日は過去のライブ再現と現在のゆるめるモ!のライブをどちらもステージ上に立ち上げ、なおかつそれを「モモモモモモ!世世世世世世!」がひとつに繋げた。あらゆるバックグラウンドが今現在ゆるめるモ!ゆるめるモ!たらしめていることが心で理解出来た。まるで巨大で雄々しい塔がそこに姿を現したかのようだった

息付く間もなくライブは終盤戦へと突入してゆく。過去とはまるで別人のようなしふぉんのアッパーな煽りから「Hamidasumo!」へ。続く「Only You」ではあのとしふぉんがダイブ、終盤はフロアの中に降りて人垣の中で観客と共に大合唱をし、ステージに戻った。
「仙台前に来たときこんなもんじゃなかっただろ!」とさらに「id アイドル」を畳み掛け、熱気は最高潮へと昇り詰めた。

「過去も今もこれからも孤独に寄り添う存在でいたい」と最後に披露されたのは、最新シングル収録の「孤独な獣」。
思えば「君たち一人一人が世界だ」「必要ない人なんていない」圧倒的に個の存在を肯定する「Only You」があり、それでも日々の暮らしの中ではどうしても弾かれて孤独になってしまう人もいて、しかしそれもここで出逢えばそれは二つになると歌うのが「孤独な獣」だ。

世界に何か違和感を覚えて、どうしても孤独になってしまう人がいる。なりたくもないのに暗い気分になってしまい、厄介な目に遭っている人がいる。好きで輪から外れているわけではないのにどうしても孤立してしまう人がいる。
でも、ゆるめるモ!の前ではすべてが受け入れられるのだ。
エモーショナルでスケール感のある心地好いギターサウンドと共に「Wow wow~」の大合唱で会場に集まった一人一人が繋がり、最後にはひとつになった。やっぱりゆるめるモ!は、人の心に巣食う孤独に立ち向かうヒーローなのだ


ある程度の過去も今も知っている自分は、今まで以上に、そして過去最もと言っていいほど、ゆるめるモ!が好きになった。そうさせてくれるライブだった。
涙が出そうだったが、実際涙よりもっと別のなにかエモいものが体から流れだそうとしていた。しかし21世紀初頭の人類の体にはそのようなものを排出する機能が備わっておらず、やむを得ず文章に起こして気を鎮めているところだ。


ここ最近のゆるめるモ!がこれまでと大きく違うのは、パフォーマンスのグルーヴ感の向上だ。
これまでは「ゆるい」という言葉がある意味では免罪符となり、一体感のなさもまた「味」として受け入れられてしまう面もあった。
しかし一時は解散の話まで出たという危機を乗り越え、それでも続けることを決意した彼女らのパフォーマンスはこの半年ほどで劇的な進化を遂げている

端的に言えば、「メンバー同士でしっかりコミュニケーションが取れている」と思えるようになった。
これまではどうにもちぐはぐで、個性の強いバラバラな子達がステージにいるという混沌な印象があったのだが(事実楽曲にも混沌を意識したものが多々あり、良くも悪くもシナジーを生んでいた)、先日の渋谷O-EASTでのライブを観ても4人の動きにはグループとしてのグルーヴ感が備わっており、全体として大きな存在を観れたような感覚があった。
これまでは意識しないと自然と「天才肌のあのばかりを観てしまう」というようなことがしばしばあったのだが、今はそんなことはなく、かといって各々の個性が殺されているかといえばそれは逆で、互いが互いを活かし合うことで上昇気流が生まれているような類の躍動感がステージに満ち満ちていた。


ステージングに圧倒的に磨きのかかった東名阪ツアーを終え、さらにこのバトルニューニュー仙台公演では過去と未来を繋ぎ、改めてゆるめるモ!が統合された。
6月の新作ミニアルバム発売と7月からのツアーも発表され、2015年にワンマンライブを行った赤坂ブリッツが東京公演として既に決定している。


惜しむらくはツアー前に今のゆるめるモ!のポテンシャルを伝えきれなかったこと。O-EAST公演は完売とはならなかった。
2017年からのライブはメッセージ性を重視するあまりエンターテイメント性が薄れセットリストにも大きく偏りがありかえって離れていってしまったファンも少なからずいるという。
バトルニューニュー仙台公演はそういった意味では過去ゆるめるモ!がエンターテイメント的に大きなアクセントとなり、そういった意味でも楽しめた。

個人的な意見だが、ライブに関してまずは「楽しさ」に重点を置いてほしいと思う。
楽しいライブをしていれば自然と人は集まってくる。集まってきて楽しんでもらって、好きになってもらえればその中から一人一人が自分に適したメッセージを受け取ってゆく。
ゆるめるモ!の楽曲には大きな優しさが溢れていて、それは敢えて焦点をガチガチに絞って伝えなくとも、聴き手となる個々人が自分の状況にあった歌を見つけるはずだ。
せっかくバラエティ豊かな楽曲が多数あるのだから、活かさない手はないはず。様々な側面からゆるめるモ!の魅力を見せまくることが、ゆくゆくはグループのコンセプトの遂行を助けることになるのではないか。


なにはともあれ、今のゆるめるモ!には強い自信も感じられる。今後に期待できるかどうか問うならば、呼吸や瞬きをするように、気付けば当たり前のように期待している自分がここにいるとだけ言っておこう。


過去ゆるめるモ! SET LIST
1.ゆるトロ(slo-モ!)
2.べぜ~る
3.ゆるめるモん
4.あさだ
5.ぺけぺけ
6.白玉ディスコ
7.逃げろ!!
8.生きろ!!
9.manual of 東京 girl 現代史
10.なつ おん ぶるー

※ももぴ、ゆみこーん、ゆいざらす、ちーぼうはお休み

現在ゆるめるモ! SET LIST
1.震えて甦れ
2.スキヤキ
3.モモモモモモ!世世世世世世!
4.もっとも美しいもの
5.Hamidasumo!
6.Only You
7.id アイドル
8.ナイトハイキング
9.孤独な獣