79 舞台スリーアウトは作演のクビ跳ねたほうがいい

高い金払ってクソつまらない芝居観たことも、無料でめちゃくちゃ面白い芝居を観たこともありますが、前者のパターンで史上最悪と言える観劇体験でした。

「面白かったら役者のおかげ」「つまらなかったら演出家のせい」という話を聞いたことがありますが、まさに、まさにそれですね。よくわかる。ああこれは良いケーススタディだ。クソ喰らえ。

 

とある高校の女子野球部がラッキーパンチの不戦勝でうっかり全国に進んだもんだから演劇部を雇って偽りのチームをでっちあげ部員獲得のためのイベントを行う……みたいな話なんですが、実際に女子野球やってる方々(というか野球人全般)や演劇人がこれ観て良い気分になります??と思わざるを得ない作品でした。野球人でもなけりゃ野球人の知り合いがいるわけでもないのですが、それでもそう思うほど、取材もろくにされてないであろう底の浅い設定と台詞のオンパレード。元演劇人的には普通に「は?」って思うのがありました。

偽りのチームをでっちあげてる話なんだからそれはそれで良いのでは?という部分もないことはないんですが、それにしちゃあ物語の視点誘導の導線がボロッボロのカッスカスで、本来なら鉄骨でしっかり枠を組まなきゃいけないのに現場行ってみたらそのへんに落ちてた小枝が数本あっただけみたいな、そんな構造です。ゴミ。

構造のゴミさをより確かなものにしているのは、おそらく女子野球部監督の人物設定。設定というか「部の監督(=教員)」という立場の人間についてああいう描き方をするのは、本職を馬鹿にしているというか、いやそもそも人間てものを馬鹿にしてるとしか思えないんですね。先に書いた野球人だ演劇人だの話も馬鹿にしてんだろとしか思えないってことで、人を馬鹿にした脚本なのでひいては観客をも馬鹿にしてるわけです。

あ、いや、っていうかそもそも人物同士の関係性とか背景の設定とか作り込みが甘すぎてまったく意味わかんなかったんです。行動の動機も謎が多い。やりたいことやったもん勝ち青春ならとでも言わんばかりに滅茶苦茶な相関詰め込んでロクに表現もできず100%勇気ですかテメェは他の知的な成分一切ナシですかコノヤロウってな感じなんですけど、まぁこれでゴーサイン出すのは蛮勇か本当に頭が悪いかのどちらかですね。まぁどっちもかな。

このアイドル芝居チケット安くないじゃないですか。前方なんか値段跳ね上がりますし、前に行くほどげんなりですよ。あんな素人ホン無料だって観たくないし、学校内で無料公演やってる学生劇団のほうが遥かに面白い作品書きます。オタクは推しが可愛ければどんなゴミ作品でもニコニコ笑って金落とすと思ってるんでしょうねーうんまあ普通に金返せって思ってますけど。こっちだってそこそこの年数人生歩んでんだから色んなもの観たり聴いたり経験してんだよなめんな。自分なんかまだ若いほうで、近くの席にいたおっさん達はもっと経験豊富なわけですから、そらもうどんな気持ちだったんだろうなぁ、と。

人間に対する敬意みたいなものが全然感じられないものを作る演劇人っているんですねーしかもこんながめつい商業舞台作れる企業様に。芝居は人間だってのに。ほんともうオタクをただの金ヅルと思ってなきゃこんな作品を観客の前に出しませんよね。自分だったら肝臓売ってでも公演中止にしますけど。

 

物語を紡ぐ設定や台詞に絶え間なく失笑するしかない地獄のような時間が続きます。随所に挟まれる伏線の域を超越した作家のオナニーでしかない数々の人間ドラマ。話の枠組みがズタボロなのでなんかよくわかんない中で勝手に盛り上がって謎に収束していきます。仕舞いには出番を与えるためだけみたいな謎のシーンまで登場し、実際そのシーンにしか登場しない方もいました。本気で謎でした。

観劇って台詞や演出から情報という部品を集めて頭の中で船を作り上げ、それに乗って航海しながら結末に辿り着く船旅のようなものだと思うんですが、終ぞ骨組みすらできあがらないままクロールで終演まで辿り着きました。あー疲れた……まったく作品に入り込めないまま終演です。なんでこれに9k近く払ってんだ自分は……

推しの活躍ぶりは目覚しく贔屓目抜きに素晴らしいと言えるものでしたが、それを補って余りあるほどの金返せ感です。こんなもん作ってメシ食ってる人間がいるなんて許せないですね。まぁ許せないことしてメシ食ってる人間なんてごまんといます。氷山の一角です。南極ツアーにでも来たんでしょうか。新宿ですけど。

 

あとは声量ない子が多いのに舞台にマイク仕込んでなかったり、Mのレベルがその点考慮されてなかったり、フラットかつ低い舞台なのに客席が互い違いになってなくて前の人の頭で見えづらかったり(前方S席ほど影響でかい)、選曲が知名度そこそこあるやつで軽くギャグだったり、女子野球部のパフォーマンス用の曲がBOØWYなの意味不明というか作演のお前が好きなだけだろとしか思えなかったり、影アナが素人文言のおっさん声でげんなりしたり(これはあくまで個人的な意見ですが、アイドル芝居なんだから出演者にさせたほうが盛り上がると思うんですけど)、製作・制作面からしてもうお察しな感じでした。

一部の力あるorめちゃくちゃ可愛い出演者の方が辛うじて場をもたせていて(すべての出演者さんが精一杯力を尽くして舞台を全うされていたのを肌で感じていたことも書き添えておきます)、それがなかったら確実に寝てましたね。なに観させられてんだろ……そしてこの子らは何やらされてんだろ……とずっと思いながら観てしまいまして、これも話が入ってこなかった原因のひとつ。なんならどういう文言でボロクソに叩いてやろうか考えながらの観劇でした。ご都合主義の美談で物語を終わらせてきたので、最後にはふざけんじゃねえぞって気持ちでカーテンコールを迎える羽目になりました。地獄。

 

開演前から結構スッカスカではありましたけど(木夜ならもうちょい入ってもいいんじゃ…)、カーテンコールで聞こえる拍手が実際の人数より遥かに少なく感じました。えらいこっちゃ。脚本は凡でもまぁ良い感じでやってて演者パワーもあり盛り上がったカーテンコールとはえらい違いで、終演後の客席もとっても静かという有様です。オタクいっぱいいるのに。

かく言う自分も手が動きませんでした。ごめん推し。でもあなたの活躍が本当に素晴らしかったのは真実です。

今度はもっとちゃんと演劇!って感じのところ(糞商業舞台じゃないとこ)で舞台に立ってくれることを願うばかりです。